□楠と雨とキミとボク□


「はぁ…まったくムサシにも困ったもんだにゃ…」
そう溜め息をついて歩いた


とくに行くあてもないのでとりあえずあの丘の上にでも行くか


そう思いながら一人足をすすめた


なぜ一人なのかは簡単
逃げてきた
何故逃げたかと言うと
これまたいつも通り
ムサシの性格上おきた事件

もうあまりにもあほらしいので
忘れたがたしかムサシがコジロウのとっておいた大事なおやつだかなんだかを食べてしまって
二人が口論になったのだ


その場にそのままいれば必ず
「どっちが正しいと思う?」
と聞かれるのは目に見えていたのでこっそり逃げてきたというわけ

丘の上には大きな楠木があり
木陰が気持ちよさそうに見えた

あそこでお昼寝してから帰ろう
そのころには口論も収まっているだろう
そう思いながら頂上まで登りきったときだった


楠木の下に先客がいるのが見えた

気持ちよさそうに眠っていたのは

「…ピカチュウ?」

それは紛れもないサトシのピカチュウだった
こちらの声に気がついたのか
耳をピンと立てると起き上がった

「あ、ごめんニャ起こしちゃったかニャ?」
「別に、気にしないでいいよ〜暇だったし」

そう言うと相手は完全に起き上がった
欠伸を1つすると体を震わせた

「座りなよ」
「ありがとニャ」

起き上がったピカチュウは座り直し
自分の横の芝生を叩いた
それにお礼を述べるて座る

なんらいつもと変わらない


サトシも
ムサシも
コジロウも
いなければ

ニャー達は仲良しだった

「風が気持ちいいニャ…」
「…うん」

だから分かる今日のピカチュウがいつもと違うくらい
第1ピカチュウが一人でこんなところにいるじたい不思議だった

「なんかあったのニャ?」
「…顔に出てる?」
「態度に」
「そっかぁ…ニャース程度にばれるんじゃボクもまだまだな〜」
「し、失礼ニャ!」
「アハハハ」

そんなことを言って笑いあう暫くしてピカチュウはボソリと口を開いた

「最近…サトシがわからないんだ…」


「え?」

ピカチュウからでてきたのは思いもよらない言葉

最愛のパートナーであり

仲間であり相棒…


のはずだサトシはなのに何故…
考えていることがバレたのか
ピカチュウはさらに話を続けた


「サトシってさ…新しい土地にくるたびに新しいポケモンでチームくんで頑張るでしょ?」
「うん」
「…なんでだと思う?」

そう言われてみればそうだ
何故毎回わざわざ1から育てるのか


……ふと頭に思い浮かんだのは

「子どもは新しいものが好き」


しかし、そんなことを言っては気を悪くする
「新規一転新しい場所で頑張ろうってことじゃないかニャ?」
「よく言えばね」
こちらが言い終わると略同時にピカチュウは言葉を発した」

「ニャースならわかってるでしょ?…あたらしいもの好きなのさ…サトシは」
「…」


やはりピカチュウだってわかっていた


「でもピカチュウは手放してないニャ」
「それがさらにわからないんだ」
弁解を狙っていった言葉はピカチュウをさらに困らせるものだった

「なんでボクだけ手放されないんだろう?」
「ピカチュウには思い入れが強いんだよ」
「じゃあほかのみんなには思い入れが薄いって言うの?」
「…」

そういうわけではない

「なんでみんな同じように愛しないのさ」
それは無理何故ならサトシはおそらく…


そのときふいにピカチュウが立ち上がった
何かと思うとニャーの後ろにまわって
「…///…」
後ろから肩から包み込むように腕をまわされ抱かれた

「…ピ、ピカチュウ?」
「ニャースだけだね…旅をはじめたころのボクを知ってるのは…」


「…」
「臆病でさ…泣き虫で…人見知りの激しかったボクを知ってるのは」

頬に何か水滴が当たるのを感じた見上げると…
ピカチュウが泣いていた…
大きな瞳に大粒の涙をためて流していた

「ニャースだけだね…ずっと一緒にいるポケモンは…」
言いたくないサトシがピカチュウに対して特殊な感情を抱いていることを


…だって自分自身にだって
同じ感情があるから…
サトシとピカチュウを認めてしまうことになるから…

だけど…キミが苦しむ姿を見たくはないから
キミが笑ってくれればいいと思うから…

ボクは言うよピカチュウ

「サトシは…サトシはきっと…」
「……」
「ピカチュウのことが好きだからニャ特別な意味で」

刹那ピカチュウのニャーの抱くチカラが強くなる
「…ってた」
「え?」
「わかってた・・・そんなことぐらい・・・だけど、だけど」
「…」
「気がつきたくなかった・・・」

いつもの強気で
意地悪なピカとは大違い

でもしってる
これがほんとの
ほんとの


ピカチュウ


ほんとはあったころから
何一つかわっていない


少し賢くなって
世渡り上手になっただけ


ほんとは


弱いままの君


ニャーは手を握り返す
「…なんで気がつきたくなかったの」


そうただ
何気なく聞いただけなのに
返答は
ニャーの想定外の言葉だった


「だって…ボクね…キミが好きだから」
「…え…」
「サトシの気持ちには答えられないから」

「にゃ、にゃーも」
返答しようとしたそのとき


「うわ!」
「にゃ!」
いきなり空から大粒の雨が降ってきた


葉の間をすり抜けて
それは強く降った


「いたいニャ!なんなのニャこの雨は」
「と、とにかくあそこに」


そういって走りこんだのは
洞窟だった


「これじゃ今日は帰れないね」
洞窟の外を見ながらピカチュウはつぶやいた
「そうだニャ〜ニャーは平気だけどおみゃーは大丈夫ニャ?」


どうせムサシもコジロウも心配などしないだろうし
問題はサトシ
あいつはピカチュウのことになると目の色がかわる


「たまには心配させてやらないとね」
いたずらっぽく笑うピカチュウに感服し笑った


もともともう夕刻近く
もう夜
今夜はここで野宿


ふたりっきりですごす夜
どんなことを話そうか
どんなことをしようか


普段は雨は大嫌いだけど


今日ばっかりは


2人一緒にお礼を言おう


ありがとう


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おまけ1

「ねえニャース?」
「なんにゃ?」
「夜は強いほう?」
「ニャ…////」


夜はまだちょっぴり長い


そしてさむいはずなのに
あたたかかった


おまけ2


「(いえなかったにゃ・・次のチャンスはいつニャ・・)」
「(トロトロしやがって…はやく告白するかもっとすごいことしろ)」

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