「俺一人で決められないよ」
そう言うとサトシは石を持ってこちらに向き直った
進化する魔法の石を持って


*理由*


自分に判断を委ねたのだ
そう理解しまだ痛い体をおこし
石をみる


そして脳裏にあることがよぎった


少し前の日の
朝焼けのとき
冷たい朝靄のなかの出来事


「ねえニャース♪」
「なんにゃ?」
そう問いかけて抱きついた


2人だけの楽しい時間を味わった後
お互いに
帰る場所に帰ろうとした矢先


僕はごねるようにニャースに抱きついて
甘えていた
そして問いかける


「僕の何処が好き?」
「急になんなのにゃよ、そんなの…」
「全部はダメだからね」


次に出るであろう言葉を先読みし
言わないように釘をさす


するとニャースは困ったような顔をする
そして考え込む
そんな顔を見てると笑みがこぼれる


僕なんかのために真剣になやんでくれる
やさしいし
あきない人だ

ほんとに
この人に心をゆるしてよかった


暫くしてニャースは口をひらいた
「このまっすぐにピンと伸びた耳」


そういって耳を摩る
肉球が当たり心地が好い


「このギザギザの尻尾」

そして今度は尻尾を摩る

「この小さくて可愛い足」
「なんだよ結局全部じゃん」


それに気がついてつっこむ
「にゃははは」
「あはは、可笑しい」



進化して
ライチュウになれば
ニャースの言ってた
僕の好きなところは
すべてなくなる


つまりそれは


ニャースが僕を嫌いになるということ


直感的にそう感じる
そしてそれが怖くて


怖くて
怖くて
怖くて


反射的に石を突っぱねた
視界にいれたくない


僕にはそれがさながら
僕とニャースを引き裂く
悪魔の石に見えた


そして
とってつけたようなセリフで
サトシに講義した


そしてジムに挑んだ


つづく

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