どこにでもあるものじゃなくて

ハロウィン小説

「…なんでキミなんかと…」
そう言って僕はため息をついた
「そ、それはこっちのよ!」
そう言って彼女もソッポをむく。

僕らは今文化祭の準備の買い出しで町に来ている。
とりわけ仕事もない暇な僕らが買い出しに来たと言うわけ。

でもまあいつもの調子でのっけから雰囲気最悪…。


相手に対する自分の気持が
どんなものか分かっているのに
素直になれない…
そんな自分に嫌気がさす。

そんな状態のまま僕らはショッピング街に入った。
今日はハロウィン


街中は沢山のカップルと
仮装した子ども達であふれている。

ショーウィンドウの中には
ハロウィンをモチーフにした服や小物であふれ
なんともファンシーな雰囲気に包まれていた。

暫く進んでいると
彼女がある店のショーウィンドウの前で止まった、
先ほどからチラチラといろんな店のショーウィンドウを見ていたので
なんら不思議はない

「先行ってていいよ店わかってるし」

迷惑をかけないようにとの思いで
そう言う彼女

「はぐれたらやっかいだろ?この人混みで…待ってるよ」
ぶっきらぼうかもしれないけれど
いまの僕に言える精一杯の心配をこめたことば。

彼女は暫し戸惑ったあと
またショーウィンドウに向き直った。

いったい何をそんなに食いいるように見ているのか。

気になった僕は彼女の背中ごしにショーウィンドウを除いた。


どうやら店は雑貨屋さんらしく
なかにはハロウィンの人形やクッション、
置物など沢山のかわいらしい小物が飾ってあった。

その中でも彼女が夢中になって見ているのがキーホルダーだった。
魔女をイメージしたものらしく
魔女の服をきた少女が箒にまたがっている。

どこかでみたことあるなあと思いつつ、
僕は疑問に思った。

なぜ数ある品のなかでこれなのか…
隣にある人形の方が大きくて目がいきそうなのに…


「そんなに欲しいなら買えば?」
半ば呆れ気味に僕は彼女に言った。

どう見たってたかがしれた値段にしか見えないし
そうに決まっている。

なんなら買ってあげてもいいくらいだ。
そう言うと彼女はふっと笑ってこちらを向いて言った。

「欲しいわけじゃないよ…ただ懐かしくてさ…」
そう言った彼女の瞳がひどく悲しげで僕は理由が知りたくなった、
何故に彼女をあそこまで悲しませるのか
その原因を知りたかった。

「どういう事だよ?」
ショーウィンドウにもたれながら僕は彼女に聞いた。
以外といった表情を一瞬浮かべながら
彼女は言った

「昔はね持ってたんだ…」
僕の隣にもたれながら。
「なくしたのか?」
「違う。あげちゃったの」

遠くをみながらそう話す彼女。
くちもとは懐かしさにほころんでいた。


「なんでまたあげちゃったのさ?」
訳がわからない。
何故にそんなお気に入りのキーホルダーをあげてしまったのか…
第1いまだって後悔してそうじゃないか。

そんな僕の視線を読み取ったのか
「あれは…まだ私が6歳ぐらいのころだったかな…」


北風が冷たく厳しいなか彼女はカーディガンを着なおしながら話はじめた。

つづく

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