「まもなく地球だ準備はいいか?」

宇宙船のなかに響く威厳のある声
ケロン軍のエリートガルル中尉
その声に船員たちが反応する


「おいっす!」


「ププ〜了解」


「くだらん」


「・・・・」


「どうした?プルル看護長。」
名前を呼ばれてはっとする
「いいえ、なにも問題ありません」
「そうかならいいが・・」
「だいじょうぶっすよ〜ガルル中尉。今回は任務ではないッスから」

そう今回は任務ではない
ただの訪問・・・
というか弟が心配でしかたがない
中尉につきそっている
というに近いのだが・・・


あくまで
「地球偵察」
という内容で報告書をだしてきている
いくら自分の仕事が忙しくて行けないからって・・


だがどの面々も会いたい相手が地球にはいるようす

タルル上等兵は師匠らしいタママ二等兵
トロロ新兵は因縁の敵らしいクルル曹長
ゾルル兵長は・・・だれだったかしら?


かくいう私も居る

鮮やかな緑色に
黄色い☆がおなかについた
「ケロロ」


口にだしてみる
はたして会うのは何年ぶりか
軍に入ってからは仕事場が違うから
わすれるくらいに久しぶり


だけど決して忘れない
幼いころにたてた誓い
アナタは覚えているだろうか?

ゆびきりげんまん


「や〜かえして!」
「やだよー」
「とれるもんならとってみろ〜」

母からもらった大切な本
それをとられておちょくられて
私は我慢できなくなって
泣いてしまった

「泣いてや〜んの!」
「弱虫プルル〜」
しゃがみこんで泣いて罵声の言葉を聞くしかない私
そんなときだった

「そのへんにしとけよ」
聞こえたのは聞きなれた
ある男子の声

「げっ・・・ケロロ・・」
「弱いものいじめなんてサイテーだぞ?」
そう言ってこちらに近づいてきた


「う、うるせえ!」
1人がそう言ってケロロを殴る
ものすごい勢いで
まともにヒットした

血を流すケロロに言葉を失い
さらに涙がます私

「・・・・・・かよ」
「は?」
「満足かって聞いてんだよ!人なぐっといて」

そのあまりにも迫力のある声に
すっかり気後れした2人は
「おぼえてろよ」
とだけ言って去って行った

「・・・いつまで泣いてるんだよ」
「だ、だってひっぐひっぐ・・・」
すぎさった後
ケロロの怪我を手当てする私
けれど血がいっこうにとまらないことに

じぶんのせいでおった怪我という責任感と
自分自身の医療能力のなさにふがいなさを感じ
私はまた泣き出した

「もういいってば病院行くから」
「私も行く」
「いいって」
「よくないもん」

無理言ってケロロについて病院へと歩く
「うん、うん・・・わかった。じゃあね・・」
そういって通信機を切る
相手は病院で看護長をしている母

「病院ついたらすぐに治療してくれるってさ」
「そりゃあありがたいなプルルのかあちゃんすげえもん」

そう私の母はすごい
母にかかればどんな怪我も治らないものはない
ケロン星のものならその名をしらないものはいない
それぐらいすごい
もはや医師としてみられるほどに


なのに


彼の傷口をチラリと見やる
痛々しく
自分が巻いた不器用な包帯を
いまだに赤く染めつづけ
みずみずしい彼の緑を
汚している


そんなにすばらしい母を持つのに
そんな怪我と血ひとつとめられない自身に
行き場のない不甲斐なさを感じ
わたしはまた泣き出した


続く

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