+甘い薬+


「ピピピピ」
乾いた部屋の空気に響く
電子音


「どーだよ?」
「・・・39度・・・」
ベットに寝た状態のまま
僕は電子機器に写った値を教える


ベットの横の椅子に座る
愛しい人に


「どーこがたいしたことないんだりっぱに病人だ」
「だ、だってえ・・・」


なんで風邪なんかひいたんだろう
せっかく今日はケンちゃんと
2人きりでおでかけするつもりだったのに

なんで・・・こんなときに・・


「と・に・か・くおでかけは中止今日一日安静に寝ること!」
そうピシャリと言い放つと
頭の上のタオルをとりかえる


「そんな・・・」
何日も前から楽しみにしていたことが
中止されものすごくおちこむ


「返事は?」
「・・・はぁ〜い」
かなしかったけど
どうやらいいこともあるみたい


どうやらケンちゃん今日一日看病してくれるみたい
それならそれでまあいいや
そんなことを思い笑った


「平気か?苦しくないか?」
そう問いかけて心配そうに近づくケンちゃん


実はさっきから
声がでなくなりそうだし
頭がズキズキするけれど
ケンちゃんを心配させたくない一心で


「平気だよ」
そうつぶやいて笑った


「オレ下でかたづけとお粥つくってくるからな」
「うん、ありがとう」
「なにかあったり、苦しかったらすぐ呼べよ?」
「うん」

ケンちゃんはそういって釘をさすと
ドアを開けて階段を下りていった


「ケンちゃんの手料理かあ〜」
エヘヘ楽しみ
そんな風に呑気に考えていたときだった


トイレ行きたい
ブルっと身震いをし
トイレに行くために立ち上がろうとする
がベットからおりた瞬間だった

「!!!???」


体がまったく言うことを聞かなくなり
頭痛がさらに悪化し
さらには
声まででなかった


「・・・・た、たすけてケンちゃん」
聞こえるはずのない言葉を
出るはずのない声で放ち
冷たい床の海に
ボクは沈んだ


暗い
狭い
何もない


目が開いたボクにとびこんできたのは
そんな空間だった


光の1つもないし
とどかないし
上か下かすらもわからない


ただひとつだけわかることは


とても怖いということ


なにもない暗闇
誰もいない暗闇
出口なき暗闇


「(いやだ)」


だれか助けて
だれか救って
だれかそばにいて


どんなに泣いても
どんなに祈っても
どんなに願っても


ボクはとまることなく
暗い暗い
闇の海へと止まることなく


沈んでいった

続く

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