*幸せになるように*

トピは凄く人気のある奴だ
愛らしい見た目
優しい性格
女の子のような仕草

どれをとっても人気に決まっている
トピを好きな奴も多いし
トピを好きになる奴も多い
トピはいい奴だから誰にでも優しいし受け入れる
誰にだって好意をもつ

わいもトピを好きになった奴の1人にすぎなくて
好意をもたれた奴の1人でしかない


それ以上ではない
しかし下手をすれば
それ以上になってしまいそうな気がする


そんなことは許されない
わいにそんな資格はないのだから
トピを愛し
トピに愛される

そんな資格わいにはない

しかし、それを望んでしまっている自分がいるこれ以上
これ以上
トピを好きになると

もう後戻りできない気がする


今ならまだ…


ぼんやりと考えごとをしながら歩く

(そろそろ…やめなあかんなぁ…)
そう思い下をむくこれ以上ないくらいの苦笑いを浮かべながら

「くさかげさん」
不意にかけられた声
びっくりして飛び上がりそうになる
「トピ…」
「今からお仕事ですか?」
「あ…ああ…そや」
仕事に向かう途中の道
この曜日にはいつもトピに会う
トピはわいが通ることを知ってまっている
わいもトピがいることを知ってかなり早めに家を出る

そしてトピと遊ぶ
それは日常として当たり前のように定着していた


急に自分に向かってくる物体の気配に気がつく
飛び退いてよけると自分に向かってきたものを確認する

「ヨーヨー?」

「お前だれだ」
ふいに響く聞き慣れない声
するほうを見ると青い体色に灰色の帽子に長い耳
わいに投げたヨーヨーが手元に戻っていく
どうやらわざと意外の何物でもないようだ
明確な敵意を感じる

「こら!シブくん危ないでしょ」
そう叱られると少しびくりとしたものの
またフンという鼻息が聞こえてくるようなソッポの向き方をする

「ごめんね、もう。シブくんったら…」
「ええってええって、ノーアでこういう子供はなれてるさかい」

わいは笑って交わしたが彼からは痛い視線が注ぐ

「ほな、わい行くわ」
「え?もう行っちゃうんですか?」
いつもは遊んでいくためトピは不信がる
「ああ、すまん今日は職員会議があるんや」
「そうなんですか…」
「トピどっか遊びにいこうぜ」
「ほら、呼んでるで」「うん…じゃあまた後で」
トピは小声でそう言うとにっこりと微笑んでシブといううさぎの方にかけていった


「嘘ばっかりやな…」

少し早くついてしまうので学生のレポートの採点でも少し真面目にしようと思いながらわいは足を早めた





「くさかげ先生」
廊下で声をかけられ振り返ると学科主任がいた
軽く挨拶をすると
「例の話考えて頂けましたか?」
「はい、スッゴいええ話っていうのはわかってるんですがね」
「やはり拘束時間ですか?」
「ええ…まあ…」
「是非前向きに考えてくださいねくさかげ先生ほどの優秀な方に僭越なのですが」
「ご冗談を…まあ、前向きに検討してみますわ」

そういいながらなわいは軽く会釈して研究室に入った
「お疲れ様です先生、お茶にしますか?」
「ああ…頼むはカーミーくん…」
助手にそうお願いしわいは椅子にこしかけるほどなくしてお茶を出す助手
「すまんな」
「いえ、そんな」
わいはお茶を飲み息をついた

「先生あの話は…」
「ああ…明日には答えだす気や」
「そうですか…」

何か言いたそうな顔をしている
おおよそのことはわかっている

腕時計に目をやりカーミーが声をあげた
「先生、お時間大丈夫ですか?」
「ああ…今日はまだ残るわ」
「本当ですか!!じゃあ是非見て欲しいものが!!」
そういいながら盛大に転けている助手もウサギなことに今更気がついた


「(答えもケジメも…明日ださなな…)」
今日逃げておいて何をいってるやら…
暮れていく空を窓越しに見ながらそんなことを思った





翌日わいは大学にいきがけにまたトピに会いに行く
いつもどおりトピはいた
今日は1人のようだった


「くさかげさん」
よってこようとするトピにわいは話かける
「トピ…話があるんや」
いつもと違い真剣な面もちと話し方にトピは途中で止まる


言いたいことはわかってる
言いたいことはある
なのに
なのに…


でない
いいたくないのだろう…
わかってる
わかってるのだ…


本当はいいたくない
だが
いうしかないのだ


「トピ…もう終わりにしよこうやって会うんも遊ぶんも」
「…!!?…ど…どういうこと?」
「どうもこうもない…そういうことや…ほなな」そう言うとわいは踵を返す
「ま…まって」
「くるな!!」
声を張り上げる
顔を見てしまうと決意が揺らぐ

「なんで…なんでなんですか…」
声が濡れてる
見なくても容易にわかるあの泣き顔

「…わいの身勝手や…許せ…」


この場から離れたい
離れなければならないのに
なかなか離れられない

「…興味がなくなったんや…ほなな…」
「まって…まって…」かけだしてくる気配
いけない
いま触れられると
抱きしめてしまいそうになる

わいは目から滴がこぼれるのを堪えながら
声を張り上げる

「二度とわいに近づくなよ!!」
それだけ言うとわいは駆け出した


逃げるように


背中から大きな鳴き声が聞こえ後ろ髪を引かれる


これでいい
これでいいんや


わいとおってもアイツは幸せにはなれん

アイツの幸せのためにはこうするしかないのだ

わいよりもいい相手はきっといる

アイツを好きな奴は山ほどおるんやから


赤い狐でも
図書館の娘でも
ヨーヨーウサギでも


全部アイツのため
酷いわいなんかより
いい奴はいるんだ…


「サヨナラや…トピ」
走るわいの目からは滴が垂れていた

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つづきます

完璧私の妄想パラレルですw

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