*ズルイ*


「せっかくの春なのになぁ…」
ボクはそう思って小さくため息をついた
せっかく作ったてるてる坊主はボクの願いを聴き届けてはくれなかった
しとしとと降る弱い霞んだような雨春雨と呼ぶに相応しいのかもしれない



家の狭い窓から見る狭い世界
雨がふったからって特別な変化はない



今日はライムさん達とピクニックに行くはずだった
けれど雨が降ってしまっては中心するしかない
弱い霞んだような雨でも雨は雨
傘さして濡れた芝生の上でお弁当だなんて



昨夜から怪しかったんだよな〜とボクはぼんやり考えていた



雨は嫌いだ
楽しくないし
雨は狭いボクだけしかいない空間にボクを閉じ込める



雨なんかふらなくていいのに
雨なんかいらないのに…
そんなことぼんやりと思いながら空を見上げる
とてもじゃないが晴れる雰囲気はない
暗い暗い空
見上げる意味もない
ボクは再び視線を戻した



雨に濡れ続ける芝と植物
そんな中に動く影を見つける
こんな雨の中
傘もささずに


誰が…


ちょっと可笑しいんじゃないかと思い目を凝らしてよく見る



緑色で背景に同化するような体の色…




ガバッと立ち上がると傘をひっつかんで長靴を履いてボクは家を飛び出した



その人物は雨の中傘もささず
カッパも着ず
雨を避けるわけでもなく
天を仰ぎ雨に当たり続けている


「くさかげさん!!何してんですか!!」
よもやそんな異常行動をしている人が自分のよく知ってる人とは…
「よぉ、トピ」
濡れながらあっけらかんと答えるくさかげさん
ボクはため息をつく
「風邪ひいちゃいますよ」ボクは傘を差し出すがくさかげさんは笑って傘をのばす手をせいす
「大丈夫やわいアホやさかい、風邪ひかへんわ」
「そんなこと言ったって…何でまた雨なんか浴びてるんですか」



雨なんか浴びたっていいことないのに
そんなことしたって何の特もなんのメリットもないのに…



「わいなあ植物使いこなすことできるやろ?」
そう言って指をパチンと鳴らすと地面から植物が生える
巨大な葉っぱをつけるその植物はくさかげさんとボクの上を覆って雨を遮った



「こいつらな雨がふると喜ぶんや…嬉しそうに楽しそうに…歌歌うやつまでおるんや」
植物を触りながらくさかげさんは話を続ける



「こいつらは晴れもすきや、晴れたら晴れたで嬉しそうに楽しそうににしよるしやっぱり歌うやつまでおる…」
くさかげさんは真剣だった
一言一言に重みがあって力強い
瞳もキリっと整っている
真剣な話の最中ってわかってるし感じてるのに
普段あまり見せない大人っぽい表情、素振り、しゃべり方…胸が潰れそうになる体が熱くなって顔も熱い
脈が荒くなる



なんだろこのキモチ



「わいも晴れるのは好きや、せやけど雨は嫌いや…じめじめするし外には出にくいし、お前にも会われへん」
少しだけ切なそうにくさかげさんは応える
またドキっとする心臓
「ボクも…雨嫌いです」
くさかげさんは切なそうに笑いながら
また巨大な葉からでて雨を浴びながら口を開く



「せやけどな…わいにしかわからへんねんこいつらの声とか気持ちとかせやからなわいが共感してやらなあかんねん…いつも世話なってるからな。せやからこやってこいつらみたいに雨浴びてたら…こいつらの気持ちわかるかなって思たんや、共感してやりたいなって」




ずるい…
本当にずるい…



普段と違う
ふざけなしの
真剣な眼差しで
かざらず
似合わないくらい爽やかで



かっこいい




ずるい
そんなこと言って
そんなセリフずるい



そんなセリフ聞いたら
ますます好きになっちゃう…
胸が潰れそうになって
息がつまりそうになる



ずるいな
ボクばっかり
ボクばっかり
あなたを好きになりつづけていく
ボクばっかり


僕は傘を畳んで巨大な葉からでてくさかげさんの横に並んだ



驚いたような表情をするくさかげさん
「トピ…なにしてんねん」
「ボクも雨嫌いだから…好きになろうかなって」
「アホか!!風邪ひくで!!」
「アホだから大丈夫ですよ」


そう言って笑うとくさかげさんは困ったような顔をする



好きな人が好きなのに
それがボクが嫌いなんて
なんか嫌だ…



やがてため息をついてくさかげさんは口を開く
「知らんからな風邪ひいても」
「ひいたら看病してくださいね」



そう言って笑いかけるボクにくさかげさんは照れたように顔を背けた


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実はかいててオチがうまくまとまらなかったんですよねコレ
で、ダラダラながくなりそうなんできりあげたのです
続編かくかもしれませんですww

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