*恋人同士*

ピカチュウ


名前を呼ばれたような気がして
夜中にはっと目が覚める


漆黒の中


無機質な部屋


いくつかのベッドがあるだけの簡素な部屋


それぞれのベッドの上にはポケモントレーナーがベッドの数だけ寝ているだけにすぎない


カーテンが開いた窓から覗く外も闇
月明かりがあるけれど
闇は闇


ニャース


闇に向かって声をかける
かすれるくらいに小さい声
誰にも聞こえない
聞きとれない
聞いて欲しくない声


キミと離れたくなかった


それはたしかだった
なのに
キミはいなくなった


どうして


キミのせい?
ボクのせい?
誰のせい?


誰のせいでもない?

嫌違う


頬を涙がつたった
わかってる


気がついていた

君が


君がこの地方に着たときから


君はニャースとして
ボクの知っているニャースとして
崩れかかっていた


おかしくなっていた

ボクを捕まえようとやっきになって


手柄をたてようとやっきになった


善良な魂をひた隠しにし
悪の上っ面で自らを包んだ


獣になった


わかっていた


けれど
ボクの前では
今までの君でいてくれた
だから
ボクは何もいわなかった
何もしなかった


捕まってあげなかった


それで君は壊れた


1つ2つ
また涙が流れておちる


わかっていた


君を壊したのは
ボクだった

ボクが壊したんだ


崩れかけた
壊れかけた君を
無視して
知らないふりをして

君に甘えた
君に溺れつづけた


あのとき少しでも
少しでも

君の魂の悲鳴を
君の心の鳴き声を


聞こうと
聞き取ろうと
耳を傾けたら
傾けていたならば


君に問いかけて
君に話をきいて
君と語り合えたなら

きっと
きっと


こうはならなかったはずだ


ボクの君への甘えが
全ていけなかった

どうして
どうして君と
対等であろうと努力しなかったのだろうか


君に甘え
君を頼り
君に依存し続けた


それが
君を壊した
君との絆を壊した


君のことが好きなら
君のことを愛していたなら
君と対等であるべきだった


君の相談もうけるべきだった


ボクばかり子供だったから
ボクが大人になろうとしなかったから


たった1人大人で気丈に生きようとした君は

ダメになった


ふいてもふいても
涙が止まらない


全部ボクが悪かった

恋人同士なら
できてあたりまえのことだった
それなのに



不意に声が聞こえる

はっと顔をあげ窓を見やる


少し何かがキラリと横切った気がした


ニャース?


思いたったら飛び起きていた
部屋の扉をあける
走ろうとして足がもつれて転けた

階段を急いでおりる

急ぎすぎて途中で飛び降りた
反動で足を挫いた


痛い


けれど体は止まらない
頭と体が一致しないくらいに
体が動く


街灯に照らされるポケモンセンターの入り口


そこに見覚えがあるシルエットが映る


尖った耳
伸びた髭
どこもかも見覚えがある


彼がいるあそこに


重く閉ざされた扉を無理やり押してあける
体のあちこちが悲鳴をあげる


けれどそれどころではない

ドアをあけきって外にでる


刺すような冷気が全身を貫く


そこに彼はいた


いなくなった時と何一つ変わらない姿


だらしなく歪んだ笑い顔
けれど一番愛しい顔


ニャース


叫んで君に抱きつく

しっかりと包み込んでくれる
暖かい両手


暖かい
間違いない
彼は
いるのだ


涙でうまく彼を見れない
君の肉球のついた柔らかい手が涙を拭う

見やると
先ほどとちがう
優しい笑顔を浮かべた君の顔



ただいま



応えたいのに
声がでない


応えるかわりに
ボクは大きな声で啼いた

再び溢れでた涙で君の姿が再び滲んでかすれた

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ロケット団、もといニャース、いや

ニャピカ復活記念

おかえりニャース。


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