*まだ知らない君*

「エレキボールだピカチュウ!」

サトシの問い掛けに応じて僕は尻尾に力をため、それを玉状にして打ち出す


しかし、それは敵に当たらず
素早くかわした敵に懐に入られてしまう

マズイ


そう思った刹那
敵ポケモンの鋭利な爪が襲いかかる


覚悟を決めた直後、体は何かに優しく突き飛ばされた


キイイン
乾いた金属音に似たものが響く


キン
キン
ガキ
キン


何度も何度も金属がぶつかり合う音


片方の金属の音は久しく使っていないような
枯渇して色褪せてしまったような
そんな音


もう片方の音は
絶えず磨かれ研がれ研ぎ澄まされた音がした



「レパルダス、みだれひっかき!」
「ニャース、こっちもみだれひっかきだ」


ぶつかり合う金属音ぶつかり合う指示



呆気にとられながら僕が見やるのは


真剣に移る君の横顔


そんな顔出来るんだ

ぼーっと
それこそ憧れの先輩を眺める後輩のように
君を眺めた


君をそんな目で見たのは初めてだ


いや、そもそも君が戦ってる


君が君自身の力で戦ってるのを


僕は初めてみた気がした


「ピカチュウ前だ」

サトシの指示が入り僕は視点を彼から前に移す


虎のように両手を広げたローブシンが遅いかかる


間一髪でそれをよける

振り上げられた武器を僕は尻尾で受け止める


火花がちって距離をとる


おかしなくらいの力だ
距離をとらなければ

そう考えて後ろに飛ぶ


ガキキキキン


弾けあうような金属音が響き


同じように距離をとった彼と背中合わせになる


「さっきはありがと」
「どういたしましてニャ」


一応お礼をいう
しかし、こんな状況でお礼を言っている自分になんだかウケた


「随分余裕だにゃあ」
「まあ、経験の差かな」
「ニャーは戦闘タイプじゃないからツライにゃあ」


そう言いながら
彼は生き生きした瞳をして爪を構える


端正な顔立ちが僅かにつり上がる


そういう顔も悪くないなあ
なんてことを考える

僕相当のろけてる?
認めたくないけどね

「さあて、敵を倒すかね」
「随分余裕だにゃあ」
「君も頑張ってよ〜君との初バトルなんだから黒星にしたくないし」

「プレッシャーかけないで欲しいにゃあ…」


うっかり出た本音
言ってしまって
恥ずかしかったけど

戦闘で手一杯の彼には届かなかったみたい
汗で歪んだ顔がそう物語っていた



だからホッとした
君にこの気持ち

まだ知られたくなかった

知られちゃうのは
なんだか恥ずかしいから

なんだか悔しいから


眼前に迫る敵
僕らは互いに地面を蹴って飛び出した

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マイブームのニャース永遠仲間&ツンピカチュウネタ

1回転して昔のさわやか志向に戻ってきた感じ

戦闘シーンは難しいですね・・・ちょっと失敗

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