*かわらない君で*



「ピーカチュウウウウウウウ」
「アニャニャニャニャニャー!」


力のこもった声の後
まさに断末魔と言うに相応しい声が響きわたる


またか

私はそんなことを思いながら
声のするほうへと歩み寄った


声のするほうに向かうと
ピカチュウが怒った様子でこちらに向かってきたのとすれ違った


やっぱりか


すれ違いながら顔を確認しようとしたが
確認するまでもないかと思いするのをやめた


九分九厘怒りの表情だからだ


目線を彼が向かってきたほうへ戻すと


やはりそこには黒こげで倒れている彼がいた


軽く笑って近づく
「大丈夫?」
「んまぁにゃ…なれっこだからにやぁ」


社交辞令を交えていった言葉
大丈夫なのは知ってたから
さほど心配も気をきかせたわけではない

でしょうね
といった感じで私は笑いながら
体を起こし座り込んでいた彼の隣に同じように座り込んだ


「彼ってばあなたのことまだ許してないというか、信じてないのかしら?」
「え?」
「だってそうじゃない?未だにあなたにここまでのことをするなんて」


彼が仲間になってからもう随分たつ


いい加減信用したらいいのではないか


他のみんなはもうすっかり信用しているというか


ずっと前から仲間のようになっている


キバコやチャオブーは彼によく懐いてるし
ミジュマルとはいい友達って感じ


かくいう私も彼を尊敬の眼差しでみている

人間の言葉を執念で勉強し
見事喋れるようになった


どんなポケモンでも憧れるであろう
人間の言葉を喋るという技能


普通に羨ましいし努力でそれを勝ち取った彼

普通ならば尊敬だ


まあ勿論私たち新入りにはわからない


数々の煮え湯を飲まされてるのはあるのだろうが


彼が仲間入りして
多くの楽しみや苦難を乗り越えてきた


彼の力なくしては超えられなかったことも多々あった


なのに


何故


「ピカチュウはああでいいにゃ」
「えっ…?」



浅黒くなった毛並みを整えながら彼は答える


「だって、ピカチュウがニャーに優しい姿想像してみるにゃ」


そう言われて私は思わず吹き出してしまった


「にゃ?おかしいにゃ?」
「た、たしかに…ふふふ、あははは」


私は堪えることもできず笑いだしてしまった

あのピカチュウがニャースに



たしかに、それは笑える
想像しただけで笑えるのだ
現実にあったらすごく笑える


「だからピカチュウはあれでいいニャ、それに、ピカチュウにニャーは何度も悪いことをしてきたし、今更許してもらうなんて虫が良すぎるニャ、だからピカチュウはニャーを嫌いで、ずっと警戒してるのでいいのニャ」

「あなたはもう裏切らないだろうに」
「それでもニャ、ああいう役が1人は必要ニャ、ピカチュウはそれをしてくれる、それでいいのニャ」

「あなたにはデメリットしかないのにね」
「まあニャ、でもま、いいのニャ、ピカチュウはあれで」


そういって笑う彼
ボロボロながらも照れたような顔


少しトクンと何かが鳴ったような気がした


「おーい、ツタージャ、ニャースそろそろ行くぞー」



主人であるサトシの呼び声に
私の音が遮られる


「あ〜わかったニャサトシ」

私も答えるが彼には私が鳴いた用にしか聞こえなかっただろう


彼が立ち上がる
私も立ち上がり彼の半歩後ろを歩いて続いた


サトシのもとにはさっき彼を黒こげにさせた張本人が
いつもの笑顔をサトシに振りまいていた

凄まじい変わり身の早さ
女である私ですら恐ろしい


歩き出した私たち一行
そんななか彼が私に近づいてきた


「ニャースと何話してたの?」

少し面をくらった
そんなことを気にするとは思ってもいなかった


というか見られていたとは


「さあ?とりとめもない世間話よ」
気のせいか
彼の視線には
なにか醜い嫉妬心のようなものを感じた

「君にとりいろうとしてるの?」
「まさか、彼はそんな寒い男じゃないわ、もっと凜としてるもの」
「随分肩をもつんだね」
「ええ、だって彼すごいじゃない?尊敬しちゃうわ」

そういい終わると
さっき感じた粘着質な嫉妬心の宿った視線をたしかにしっかり感じる


女だからこそわかる視線


薄く視線を彼に移す
やはりそれは彼から注がれた視線


「いっとくけどさ、彼の苦労を一番しってるのは、一番付き合い長いぼくなんだからね」


フンという擬音が聞こえてきそうなくらい勢いよく首を振って



少し前を歩いてたニャースの隣にいってしまった


本日二回目の吹き出しをなんとかこらえて私は少しだけ頬を緩ませた


(あなたは全部お見通しってわけね)


心の中でそうつぶやいてあなたの端整な顔立ちをみる


(ますますあなたに興味がわいたわ)


私はそう少し笑って
彼を見つめた
緩んだ頬と少し火照った体で

彼の端整な顔立ちが僅かに歪んだ

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ツンツンピカチュウに初挑戦してみました!

わがニャピカ相棒のリクにこたえた形になりました!

書いたことなかったので少し戸惑いましたが

次からはしっかりかきたいですね!

ツタージャ姉さんマジ姉さん。かいててたのしかったww

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