*王様ゲームの機会*


たぶん言い出したのはナナだった気がする
もしかしたらコタローだったかもしれない

はたまた悪乗りしたロミオとジュリエットだったか
そのあたりは忘れてしまったが


何故だか拙者は
王様ゲームなるものに参加させられることになった


キッドの奴なんか絶対に参加しないと思っていたのに
王様はなんでも好きな命令ができる



という話をきいたとたん
やろうやろうと沸き立った
無論黒い笑みを浮かべ


天は我らを見放した

何故か王様はキッドがなるばかり
リアルに天が見放したとしか思えない


如何様をしているのではないかと疑うが

くじを束ねて持っているのはミーの奴だ

ミーならミーで剛の奴を王様にするような如何様をするはずなので如何様ではない


やはり天が我らを見放したのだ


おかげで
剛はボールにされ
ロミオはサンドバックにされ
ジュリエットは買い物にいかされ
コタローはキッドに膝枕をさせていた


まあコタローはにやついていたため、あまり罰ではないのだろう


そんな某国もびっくりな独裁国家を築き上げたキッドだったが


やはりサイボーグになっても猫は猫
何時だって気まぐれなのだ


「もう王様もあきたなあ、お前ら好きになれや」

そう言うと
王様とかかれた棒を投げる


それに群がる醜い下僕達
我先にと棒に群がるその姿は池の鯉とまったく同じだった
そんな醜い下僕達の姿をみてせせら笑う王様キッド



やはり独裁国家の王様にふさわしい


一通りのいざこざが終わり
棒を手にしたのは意外や意外なジュリエット


正確には勝ち取ったロミオから横撮りしたに過ぎないが


「やっぱり王様ゲームといえばkissよね〜ってなわけで一番が六番にキス」

「やぁんあたしあたし七番ーせっかくクロちゃんにキスするチャンスがぁ」


キッドが六番とは限らないのに


「ボクは三番だぁ…ちぇ…」

何故残念がるコタロー

「ワタシは四番ですねぇ」
「ワシは五番だ」
「僕は八番ですねえ」
拙者は二番

つまり…


「ボク一番〜!」
「ちっ、オイラかよ六番は」


ナナの勘恐るべし


しかし、組み合わせは意外というかなんというか
大乱闘に発展しないかが気になる


「な〜んだクロか」
「そっくりそのままそのセリフ返すぜミーくん」

「ほい」
「ん」


なんとあっさり
あまりにも早い
そして少し長いキス

軽くキッドに近づき
口を突き出し
触れるような軽いキス


長いのか短いのかよくわからなくなりそうな時

2人の唇が離れた


「さー続きしよー」
「もうオイラ飽きたぞー」


「ちょ、ちょっとまってよクロちゃん!なんでそんな簡単に!」
「ミーくんもミーくんだよ!どうしてそんな簡単に」


キスを逃し、嫉妬したナナとコタローが詰め寄る


しかし2人はあっけらかんと答える


「だって、クロだし」
「だって、ミーくんだし」

ねー
といった様子で顔を合わせるミーとキッド

といってもミーはノリノリ
キッドはだるだるでテンションの差は明らか


結局そのあとは飽きたキッドが抜け


キッドが抜けたのでナナが抜け、コタローが抜け


で自然解散になった

そんなこんなで今キッド宅にいるのは
拙者とミーとキッド

キッドは縁側で寝転んでおり
拙者とミーはテレビの前でテレビをみる

ありきたりな情報番組がシワをとるマッサージだとかを熱心に説明している


「よく、簡単にキスできたな」
気がつくと聞いていた
ミーはこちらを向いて答える

「だって、ボクとクロはサイボーグ同士だからね、機械と機械。暖かさなんてないもの。」


あっけらかんと悲しいことを言ってのけるミー
その顔には悲しみも何もない


あっけらかんと


以外の言葉がでない


「機械と機械がくっついたって何にも変わらないよ。冷たさと冷たさ。なんにもないんだ。ボクとマタタビくんがキスしてもマタタビくんとクロがキスしたって、
マタタビくんは少しはなにかあるかもしれないけれど、ボクとクロにはなんにもない」


自らを機械であるといいはる彼からは
機械であるがゆえか、表情は深くまではよみとれきれない
ただやはりあっけらかんとしたものをうけとれる


それはやはり自らが機械であるということが
自らの誇りにつながっているからかもしれない



「ボクとクロのキスなんて
あれと同じさ」


指を指す先には
隣接したテレビとビデオデッキ


あれと同じだというのだ


「2つはくっついたってオーバーヒートなんかしないでしょ、それとおんなじ」

そこまでいうとミーは立ち上がり
キッドがいる縁側へと消えていった



違うな

お前らはテレビとビデオデッキなんかじゃない


拙者は見た

目を瞑ってミーを迎えようとするクロを

微かに震えたクロの手のひらをミーが自らの手のひらで覆って
震えを止めたこと


機械と機械が重なったのじゃない


機会に機会が重なっていたのだ


お前らは
キスをする機会を重ねに重ねたのだ


つまり
しなれた
しすぎた
行為


だからオーバーヒートなんかしない
あたり前だ


オーバーヒートしないように
開発と改良を重ねに重ね
機械は進歩した


お前らも同じ
進歩した機械なんだ


「けっ…大人になりよって」

昔とは違った
改良された貴様に精一杯の皮肉をこめて
拙者は視点をテレビに戻す


いつの間にか
いつの時代だ
と言いたくなるような甘ったるいラブドラマの再放送が始まっていた


-------------END--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
タイトルを「機械と機会」にしよかとしたんですが
なんとなくネタバレになるといかんのでやめときました
ミークロすきです

inserted by FC2 system