嫌な夢で目が覚める 冷や汗と言う名の生温い汗

荒く息をつく 喉が水が与えられない畑のように渇きひび割れているようだった

起き上がって嫌な汗を拭う

書き上げた右腕の毛がなだれて寝そべった

息を改めて整える

今の夢だ 常世でもなければ 今は現実

どうかしてる 他よりもっと怖いものが現実には溢れてる

自分よりも大きな敵 電撃が効かない敵

悪い人間

目に見える怖いものが溢れるこの世界

なのに

夢でみたそれは 見えるものですらなかった

さようなら

君の声が何時までも脳内で 何時までもエコーする



*まだ*



辺りはまだ暗かった 到底夜明けが近いとは言いづらい

僕はゆっくりと起き上がると

隣のトレーナーを起こさないように避けて

夢にでできた彼のもとへいく

彼はそこにいた 寝息をたて 種族特有の体を丸める仕草をして

月明かりに照らされるその体は 闇夜に対比するように白く淡く光っていた

君が仲間になったとき 僕は本当に嬉しかったんだよ たとえそれが

演技だとしても

だから

君がいなくなるのは凄くやだ

頬に手を伸ばしてさわる ふさふさとした毛並み

確かに君はそこにいる 僕も君のそばにいる 君とこうやって触れ合える

こうやって 少し手を伸ばすだけで 君と触れ合える

いままで 触れたくても 触れられなかった

そんな距離だったはずなのに

今はこんなにも近くにいる

こんなにも近くなったのに 僕が見る夢は

君がいなくなる夢

君がいなくなる 君が遠くに離れていく

「いい加減にするにゃ、にゃーはちゃんとここにいるにゃ」 寝ていると思っていた彼から思わぬ声があがり

僕は少しビクついた

「ピカチュウ、おみゃー毎日毎日、何回もしてるにゃ、にゃーがいるかどうかの確認を」

「だって…」

分かってるよ 子供っぽいとか 鬱陶しいとか心配しすぎとか

でも、なんだかわかるんだ 僕には

君がいなくなってしまう

いつか

君はいつかはいってしまう

何時までも旅はできない 一緒に

鳥が巣に戻るように 彼もあるべき場所に帰るのだ

だから

僕はニャースの胸に飛び込む ニャースは僕をしっかりと抱き込むと 悪戯っぽく笑う

「愛したいのかにゃ?」

答える代わりにしっかりと抱き合う

満たされる気持ち 火照る体

それが気候だけのせいではないことが分かっていた

だから今のうちに

もっと君に触れて 熱くなりたい

また、当たり前のように触れ合えなくなるその時まで。

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ニャースが同行していた時期に書いた品

もっと同行してほしかった・・・


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