A thing only for me


「イテテ…火虎さんは厳しいなぁ」
火虎さんとの特訓を終えた僕は
1人帰路につこうとしていた


1対1の特訓


今でも時々している
すごくためになるし
力もつくし
レベルもあがる


一見いいことづくめのような気がするが
実はそうじゃない


エスケープには会えない
エスケープは僕と一緒に特訓をしてないから
あうことができない


別に探検の時はいつでも嫌でも一緒なのに


たった1日会えないだけなのに


僕は変な奴だ
特訓が終わるとエスケープの家に一応よるようにしていた
だが特訓は思いの他早く終わってしまった

理由は簡単
大きな依頼が射さんのところに入り
射虎野そうででいくことになったのだ


まだお昼もそこそこだ
エスケープは今日は依頼をしにいってる
遠い場所だから帰りは遅くなるだろうなと思い僕は広場で買い出しをし早めに帰って休むことにした
体がギシギシと悲鳴をあげているし


広場にいくとなんだかひとだかりができていた
なんだろうと遠くから見てみると見慣れた帽子と黄色と黒の耳が見える


(エスケープだ!!)


そう思うと嬉しくなってかけよろうとするが


「エスケープさんだかっこいいー!!」
「やっぱりピカチュウってかわいいー!!」
「ピカチュウ見たの初めて!!」
「依頼していいですかー」


黄色歓声が飛ぶ
周りのひとだかりはみんなエスケープのいわゆるファンだ
さわったり握手したりしてざわめきいろめきたっている


嫌な僕が現れる


自分でもわかってる
これが嫌な僕だということは


あんなエスケープは嫌いだって思ってしまう
他の人と楽しそうに話したり
他の人に笑顔をふりまいたり
他の人の相談にのったり
他の人とイチャイチャしたり


そういうのを見るとつくづく嫌になる


エスケープは勿論かっこいいし
意外と頼りになるし
優しいし
しっかりしてるし
そりゃあ人気がでるのもわかる


人気というのは救助隊にとって大きなアドバンテージだ
人気があればそれだけ知名度もあがるし
依頼も増える


だから同じ救助隊の仲間としてはこれほどいいことはない
はず…
はずなのに…


僕にとってこれほど面白くないものはない
イライラし
心がモヤモヤし
頭に血が集まって頭が痒くなる

子供ぽいなって思うし嫌な奴だなって思う


だけど
エスケープは
エスケープは…

なんだか自分が上手く表せなくなって
よくわからなくなってその場から逃げるように立ち去ろうとした
まだエスケープから遠いし
人ごみのせいで見えてないだろうと思ったからだ

その時


「お、ダネー」


呼ぶ声が聞こえて振り返るとエスケープが人ごみに謝りつつこちらに歩いてきた
片手に紙袋をもって歩きにくそうだ

「どうしたのそれ」
「ああ、なんかくれたんだ「頑張ってください」ってな」

おかしそうに笑うその姿見える歯とかあがる頬とか
そんな当たり前の姿


でも


胸が潰れそうなくらい何かあつくなる


手をふりながら僕らは広場からでた
広場からでるなりエスケープは荷物を僕におしつけた


もってみてわかったが相当重たい
こんなのを片手にもったまま
あれだけ笑顔をふりまいて話に応じてたのかと思うと改めてエスケープが凄いと思う


それに比べて自分はどうだろうか


くだらない嫉妬と
幼稚な執着心
理不尽な独占欲


改めて自分が子供ぽいことを痛感した


エスケープは…
エスケープは…


「なんかあったのか?」
ふいにかけられた声飛び上がりそうになる


「な…なんで?」
平静を装って反応する
「泣きそうな顔してるぞ」
言われてはっとする目頭が熱くなっていると


本当に子供
もうバカも通り越して呆れる


どくれて
ふてくされて
自己嫌悪に陥って
最後は泣くだなんて


泣いちゃだめだ
泣いちゃ
泣いちゃ…


止まらない涙が止まらない
止めたいのに
止めようとしてるのに
急に泣き出したりなんかしたら
エスケープに迷惑がかかるのに
なんで


自我すら思い通りに扱えない自分に本当に腹が立つ
それがまた涙に変わる悪循環
本当に
ヤダ


目頭に柔らかい何かがあたる
それは紛れもないエスケープの手で
暖かく柔らかかった
「泣くなよオレが泣かしたみたいじゃんかよ〜」
「うぅ〜ご…ごめん…」
またエスケープに迷惑かけて
僕ってば本当に…
ダメな奴…

「まあ泣きたかったら泣けよダネは弱虫泣き虫だからな」


そういいながらニッと笑う
何時もからかい


何時もは言い返したり
つっこんだり
罵りあいになったりするけど


今日は何も言えない


本当にその通りなのだから
止まらない涙エスケープはなおも自らの手で拭きつづける
エスケープの綺麗な毛並みが濡れて湿りへたってしまう


「ごめん…ごめん…」


謝る事しかできない自分に嫌気がさす


「いいんだよ…泣きたかったらら泣けよ拭くくらい拭うくらいいくらでもしてやるよだからいくらでも泣きな…オレの前ではな」
「……!!!!!」


はっとすると同時にまた涙がこみ上げてくる
エスケープは鞄から取り出したスカーフで涙をふきはじめた


でもこんどは
辛いとか悔しいとか苦しいとか悲しいとかじゃない
もっと暖かい暖かい思いが溢れてくる


「ごめん…ごめん…ごめんね…」
「いいんだよ…なきたいときは泣け叫びたいときは叫べ喧嘩したいときは喧嘩すりゃいい泣いたらオレが拭いてやる
オレはダネのパートナーだからな濡れるくらいわけないさ」


顔をあげる
いつも通りのキシシシというような音が聞こえそうな歯を見せながらの笑い方


「ひっでぇ面」
「う…うるさぁい!!」


泣きながら怒鳴っておいかけるとピカが逃げる


「これ耳福に売りつけようかなダネの涙つきって」
「やめてよもう!!」

エスケープは僕だけのもの
それは無理な願いかもしれない
だけど


喧嘩しあえるエスケープは僕だけのもの


涙を拭いてくれるエスケープは僕だけのもの


救助隊としてのパートナーとしてのエスケープは
きっと僕だけのもの

横をむくと
いつもいてくれるエスケープは
僕だけのもの


強く強くそう感じる
駆け抜けた風に涙をのせて
泣くことはない

エスケープはいつも
ずっと側にいる
だから泣く必要なんかない


前をむけば
隣をむけば
ふりむけば
いつもいる
これからもずっとずっと
何かを貰って
何かをあげて
僕らは育っていく
まだまだ蕾


それは紛れもない
僕の
僕だけのエスケープ


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キジ救助隊をお借りしました。なにかありましたらすぐにおろすので!!すいません!
ちょっと勢いでかきすぎていろいろ矛盾とかあやふやがありますなあ…
でもこれはこれで好きだったり
ビィさんよろしければドウゾ

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