どうでも良い日々が続く
食事は相変わらずとらなかったが
ある日タケシがついに壊れた


強く器を地面に叩きつけ嘆いた
「オレは…ブリーダー失格だ…長年連れ添ってるピカチュウの気持ちもなにもわからないのに…ブリーダーなんかなれっこない…」


地面にひれ伏し
何度も拳で地面を叩く


割れた器と
ボクあてに改良されたであろう柔らかめのポケモンフーズが無残に散らばり潰れていた


タケシが食べ物を粗末に扱うのを初めて見た
いつも残したり
こぼしたりするのを注意していたタケシが


その姿に衝撃を覚えた
感情的に怒る彼の姿も初めてだった


サトシも同様に我慢したまってきたものが弾けた


「オレもだ…オレなんか…オレなんかピカチュウのトレーナーだっていうのに…」


悔しそうに
悲しそうにする
帽子を深くかぶりなおしツバで顔を隠す
サトシが泣くときにする癖だ


そんな2人に挟まれ
まだ経験の浅い少女ヒカリは困惑するしかなかった


何時もように気軽に口癖の
「大丈夫」
というわけにいかないようだった
経験の浅さとボクとすごした日々の差が明確である以上
何を言うわけにもいかず
言うべき言葉すら思いつかないようで
ただただ俯いてスカートの裾を皺がよるほど強く握りしめていた


ボクは散らばったポケモンフーズに口をつけた
柔らかくて喉に通りやすいように作られたであろう食感が
砕けてしまったフーズからも伝わる


ボクは非道に
非情になれなかった


それほど大人でないのだ


悲しみ嘆く彼らを
よく耐えたよく頑張って非道に非情になれたほうだと思う


ただやはり最後までは突き通せなかった


甘くなってしまう

信念を突き通すことができない駄目な奴だ
嫌われたのなんか当然なのかもしれない


吐き気がしそうなのをなんとか食い止め懸命に飲み込む
食べた食べたと騒ぐ声
はっきり言って耳障りだ


それでもようやく作り出した笑顔を向けると更に歓喜の声があがる


しかしなかなか笑顔が保てない


笑顔ってどうするっけ?
笑顔ってなんだっけ?
笑顔かわいいのかな…

暫くしてなかった笑顔作り方すら忘れてしまった


泣きたくなる


なのに瞳は乾いていて
滴をたらせずにいた
泣き方すらも忘れてしまった


しかし、忘れた理由は違う
前者は長い間しなさすぎた
後者はやりすぎたやってやってやりつくした


涙が渇ききって枯渇した
だから泣き方を忘れたというより泣けない
もう泣くことすら馬鹿らしい
注意する人も拭いてくれる人もいないのだから


その場を凌いだ後
僕はひっそりと誰もいない場所で
摂取したものを全て吐き出した


苦しくて


つらい

いつになったら楽になれるのか
もう全部忘れてしまいたい
そう願うように胃酸を交えた汚物を吐き出しつづけた
そうならないとわかっていても
ただ願うように

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書いててつらいですねえ〜
まだつづきます

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