*レストランのクリスマス*


「まだお仕事あるの」
「イブですからね沢山のお客様がいらっしゃいますので」


そう言って私はまたお客様がいらっしゃる席のほうに向きなおる


「せっかくパリから来たのに…」


不満そうに顔をふくらせるあなたどこか愛らしい
がやはり少し申し訳ないが仕方がないのだ
ケーキ屋やフライドチキン屋ほどではないが
レストランにとってこういうイベントは見逃せないのだ
稼ぎ時として


まあ当店は稼ぎだけを目的とはしてないのだが
「暇なら手伝ってくださいよ」
「やだよ来るだけで疲れたんだもん」


そういってそっぽを向いてしまう
相手をしてあげたいと思うところでカパカパの叫び声が聞こえ頭が痛くなりながら現場に急行した


それからは忙しくて忙しくて…
目がまわるようだったせっかく来てくれた彼には本当に申し訳ないなあと思った


やっと仕事が終わったのはもうイブからクリスマスになっていた
彼がいた厨房に行くと彼の姿はなかった
怒って帰ってしまったのかと思い本当に悪いことをしたと悔やんだ


「パリは遠いですね…」
小さな窓から外を見やる
小さな窓からはパリはおろか少しの先すら見えない


黄昏ていると聞き慣れない電子音が厨房に響く
大理石ダイニングの上を見やると綺麗なラッピングが施された箱の中から響いているようだ


多少不気味だ


普通なら開けるのを躊躇うだろう
ただ死んだ身の自分としてはなんにも怖くない
平気で開けると中にはピエールがいつも手にしてる携帯電話と同じものが入っていた


使ったことはおろか持ったことすらないため使い方がよくわからない
かろうじて思いだしたピエールのやり方を真似ると声が響いた


「遅い」
「なんですかこれは」
「もっと喜んでよねそれ最新式でなっかなか手に入らないんだから」
「何かと聞いてるんです」
「ムードないなあクリスマスプレゼントだよ」
「プレゼントですか」
「うん、これあればいつでも話できるでしょ?」


電話越しでは表情はわからないがおそらく照れた表情で笑っているのだろう
気づかれないようにこちらも笑って彼に返す


「私からはプレゼントを渡しそびれてしまいましたね」
「いいよ…その代わり毎日電話しようね」
「これはこれは…なかなか手間のかかるプレゼントをしなくちゃなりませんね」
そういってお互いに笑った


外は雪
「いまどこですか」
「んーブラブラしてる結構レストランの近く」
おそらくかっこよく帰るつもりだったのだろうが出来なかったのだろう可愛いと素直に思った


「迎えにいきますよ泊まっていってくださいサンタさん」
裏口から出ながらそう呟く


広がるのはブラブラするのもわかる綺麗な雪景色だった

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クリスマスもの

予想と少し違うできに・・・

マニアックですいませんww

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