瘡蓋


ふっとばされた傷が乾かないうちにニャー達はアジトへと戻ってきた
3人ともフラフラだ


ムサシとコジロウは帰ってくるなり布団もしかずに床へとひれ伏し
騒音ともとれる大きな音をたてあっという間に夢の世界へと落ちた


1人残ったニャーは申し訳ない程度に置かれた小さな時代遅れのテレビのスイッチをいれる
何やら若手たちが騒いでいるバラエティー番組のようだが


何も笑えない


この人たちが面白くないわけではない
笑えないのはこの心もちだから


テレビをつけたままゴロンと横になる
不思議な気持ちだった


今は何も笑えないし
かと言って何を悲観するわけでもない


痛い


いままで吹き飛ばされたことも
攻撃されたことも山ほどある
もう慣れっこだった


痛いのが当たり前になって
出来た傷跡が瘡蓋になって
その瘡蓋が乾かぬうちにまた痛めつけられまた


そこに新しい瘡蓋が出来初めて


いったい何度そんなことを繰り返しただろうか
そうやって再生し生成された肌は強固になって
そんじゅそこらのことじゃ傷もつかなくなった


だから痛くなかった


だけど


今日傷つけられた場所は今まで傷つけられたことのない場所で
柔らかいままの皮膚を保っていた
そこに凶刃な刃が突き刺さった


突き刺すだけで飽きたらず


抉り
引きずり
出し掻き回す


出来てしまったこの大きな傷を
自分1人の力だけで生成する

瘡蓋で

これほど大きな傷を再生できるのだろうか
蘇るのか


いつの間にか濡れてしまった頬
拭う気にもなれず放置する


テレビの音がどこか遠くに聞こえる
聞こえてないかのように聞こえないように目を瞑る

どこからともなく芳る蝶の香が漂ってきた


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DP140話より
あの2人の姿を見てニャースはどう思ふのか

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