戯言?
それとも…


*ねごと*



「ピカチュウはまだ寝てるのか?」
ビバークの翌日の朝
朝食の準備の最中に響くサトシの声


皿を並べる手を止めてまで心配する辺り本当にピカチュウは愛されているなあと思う
「ねえピカチュウをポッチャマ起こしてきてあげて」
ヒカリにそう頼まれた僕は胸をはり答えるとピカチュウがまだ眠る場所へと向かう
足音がついてくる振り向いて見るとミミロルだった


頼まれてないのにも来るあたり
親切なのか
お節介なのかと思うがもし寝ているのが僕ならば彼女は来ないだろう


寝てる場所まで行くとピカチュウはいまだに眠ったままだった
何の夢を見ているのか
少なくとも良い夢を見ていることは心地良い寝顔から容易に想像できた


早速起こそうとするとミミロルに止められる
目から怪しい光が迸る
息づかいが荒い
不純な妄想でもしているのだろう
暫く眺めさせなきゃどてっぱらにピヨピヨパンチが飛んできそうだ


よくよく見てみると本当に気持ち良さそうな顔をしている
いったいどんな夢を見ているのか


「……」
「ねえ!!今ピカチュウ何か言わなかった!?」


そんなこと言われたってしったこっちゃない
寝言など無意識のうちなのだからいちいちそんなことに神経を過敏にしてられない
いい加減起こしてもよいかと思いピカチュウにさらに駆け寄ろうとする


「…好き…」


首の後ろを思いっきり捕まれる
正直臓器の何かが出たかと思った
激しく噎せる僕にとりあわずピカチュウの言葉に耳を傾けている
そのよく聞こえそうな長い耳につつくで風穴あけたろかと心中で毒づく


「…だから…好きだってば…」


新たに発せられたピカチュウの言葉に悶絶するミミロル
転げ回るその姿を踏んづけてやりたい
だいたい何度も言うようだが寝言など無意識のうちに発せられてるのだ
つまり誰に対して発せられたものではないのだから
当然ミミロルなどに発せられた言葉ではないのに


次に言葉が発せられると信じ
その内容に淡い期待を抱いているのだ
女の子らしいといえばらしいが
気持ち悪いっちゃあ気持ち悪い


第一次の言葉がミミロルの願い通りのセリフなのか以前に
ピカチュウが次の言葉を発する保証すらないのに


しかし予想に反してピカチュウの口が動きだした
ミミロルが神経を集中させる
僕も何故だか神経がこわばる


「だからあ好きだったってば…ニャース…」


言い終わると口元が笑みになる
ほころんだ笑顔
普段では見せない顔だった




暫くの間無言の状態が続く
何かを話さなくてはならない気がするなのに言葉が出ない
見つからない
僕とミミロルの表情と心はきっと今のピカチュウの真逆に違いない


ガタ


おもむろにミミロルが立ち上がったかと思うとそのままの勢いで飛び出していってしまった



止めることも
言葉をかけることも出来なかった
暫くの間その場に座り込んだまま時がすぎる
やがてヒカリの声が響いた


「ポッチャマー?まだ?」


その問いかけに答えようとして顔をあげる
しかしやっぱり言葉がでない
気がつくと一筋の水がながれ顔を湿らせていた


言葉にできない


裏切られた気分と
盗み聞きをした罪悪感と
してしまって知った真実に


後悔し愕然としたまま時が流れるのをただただ感じていた







うっすらとしか開かないぼやけた視界に映るピカチュウはやはり楽しそうな笑みを浮かべていた


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ちょっち切ない系
ピカチュウったらって感じですねおのろけです
誰かが恋で幸せになると
かならず誰かが泣くと言いますが…


で…
ピカチュウさん


ほんとに寝てるんですかね?

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