第5章 鬼と2人きり


ピカチュウの発した言葉に耳を疑った
ピカチュウは何をいっているのだ
返答を求めるつもりはなかったらしくピカチュウは独り言のように言葉を続けた


「今日僕がここにいるってことは誰も知らないよ黙ってでてきたから」
「いなくなっても何故いなくなったのか何処へいったのかわからないだろうね」
ピカチュウは何をいっているのか
そんなことをバラしてなんになるのか


にゃーがピカチュウの敵で
ピカチュウを捕獲することを目的としていたということに気がつくのに何故か時間がかかった
目の前には車が通るような大通りが広がっているのに
通る車はごく少数で
人通りもほとんどなかった
そんな空間のなかでなんともいえない気まずい空気が時が流れる
長居したくなかった


ピカチュウの言いたいことはわかる
ピカチュウはこういいたいのだ
「いま僕をさらっても誰もどうしていなくなったのかわからない何処へいったのかもわからない君達は疑われないさらうなら今だよ」
とピカチュウは誘っているのだ
しかしまた一体何故なのか
彼は捕まることを嫌がりにゃーたちを撃退してきたはずだ
それなのに何故…
辺りはだいぶ暗くなってきていた


「何故そんなことを言うのにゃ?」
時間を随分とかけたにもかかわらず
にゃーが出した言葉は月並みの領域をこえていなかった


にゃーは顔をピカチュウに向けた彼の目は少し残念に見えた
「君が僕に会いにこなくなって随分たつねどのくらいかわかる?」
先ほどと違って返答を求めるものだった


思いだそうとしたが思いだせなかった
あのあやまちを犯した日のことを覚えておきたくなかった
1日も早く忘れたかった
だから長い月日がたったということしか覚えていなかった


「1ヶ月くらい?」
「2ヶ月と18日ぶりだよ」
あてずっぽうで言った台詞は素早く削除された
彼の表情はまた少し残念そうになった
そして何故そこまで細かく覚えているのかに疑問を持った


「はじめのうちはうっとおしい奴がいなくなってやったって思ってたんだ」


ピカチュウの言葉は残酷だった 
ピカチュウがにゃーをどう思っていたのかがわかってしまった
どうせなら知りたくなかった
知らないまま過ごしたかった


わかっているつもりだったピカチュウのにゃーに対する気持ちなど
だけどにゃーはわかっていなかった
心の中のどこかでちょっとした期待をもしかすると抱いていたのかもしれない
身の程知らずの図々しい奴にもほどがある浅ましい
散々自分を戒める言葉を自分にはいていると
ピカチュウが言葉を続けた


「でも…なんか…上手くいえないんだけど…」
先ほどまで立て板に水のようにスラスラとしゃべっていた彼の口調が詰まったようになる
言葉がひっかかって上手くでない感じのときのものだと直感した
自分がよくなるからかもしれない


「なんていうかね、物足りないっていうか心に穴が開いたみたいっていうか…その…」
どことなくピカチュウの顔が赤い
いつの間にかにゃーはピカチュウの目をじっと見つめていた
次に出る言葉になにかしらの期待を抱いていたのかもしれない
少しの沈黙の後ピカチュウはやっと口を開いた


「さびしかった…会えなくてさびしくて辛くて…なんだか胸がチクチクして…会いたい会いたいって思うようになって」
痛いほど良く分かった
言葉で表してくれなくて良い
自分もまったく同じ気持ちを抱えていたから
「この気持ちが…好きだってことに気がついた」


大きめのトラックが一台前をかすめるように通り過ぎていった
強い風が吹いたと同時に俯いていたピカチュウが顔を上げてにゃーを見つめた
その顔は熟れた桃のような色で舐めると仄かに甘いのでないかと思った


通り過ぎた風が木々をゆらして音を奏でた


「僕…君のことが好き…」


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短めですよね次と繋げてもよかったかな…
次でようやく終わるかと思われますw
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