「ピカチュウ…もう帰ったほうが…」
「僕と一緒にいたくないの?」


そういわれてしまうと何も言い返せなくて
にゃーは小さくため息をついた
横に置いてあったかわいらしい箱を包んでいる包装紙が微かに揺れた


*バレンタイン小説*


ピカチュウは今年もいつもどおりにプレゼントをくれた
今日はそういう日
ありがとうというとピカチュウははにかんだ笑顔を返した
ここまではいつもどおりだった


「僕今日帰らないから」
丁寧に包んである色彩豊かな包装紙の中身を何かと想像していたにゃーは判断に時間を要した
「え!?」
ようやく判断して声をあげたがうわずった変なこえになってしまった上に
一言発しただけであった


辺りの暗さがますます増してきた
それに加えて寒さも加速する
この時期特有の刺すように冷たく鋭い風が体の心まで突き刺さる


にゃーたちは町外れの廃れた公園にいた
辺りに人影はない


ただでさえ物騒な世の中だ
ついこないだもこのあたりで子供一人失踪したらしい
こんな町外れの廃れた公園で親は子供を遊ばせたがらないだろう


そんな子供をいかせたくない公園は子供も来たがらないような遊具のラインナップだった
塗装の剥げた小さい滑り台に
ずいぶんと色の悪い砂場
腐った木でできたブランコが2つ


それだけだった


そんな腐ったブランコににゃーたちは並んで座っていた
意図的にこいでるわけではないがブランコは時折微かに揺れた


「どうして帰りたくないにゃよ?」
「何?そんなに帰ってほしいの?」
「そういうわけではないけど」


ピカチュウは機嫌悪い口調だ
しかし、対照的に表情は曇り悲しそうだった
その曇りは寒さからきたものではないだろうと直感できた


何か嫌なことがあって帰りたくないのだろうか
でも何が嫌なことがあるというのだろうか


暖かいご飯
暖かい部屋
暖かい仲間
それらが彼を迎えてくれるはずだ


なのに何故なのか
いくら考えてもわからなかった
日本語が覚えられるに恋人のことがわからない自分がふがいなかった
沈黙の冷たい時だけが流れた




「今日は帰りたくないんだ」
当然ピカチュウは独り言のように呟いた
気の利いた返事をもとめるつもりはなかったのかピカチュウはさらに続けた



「答えが僕の中ではすでにでているんだその問題の答えが、
もちろん僕はこの答えが正解している自信がある…なのに…その問題をどうしてもう一度受け取って検討する必要があるんだい?
答えはNOだよ必要ない答えを変える気なんてない今もこれからも…
なのに…受け取ってしまうとその問題をくれた相手に期待させてしまうでしょ?変えるんじゃないかって…
だから僕は受け取りたくない。」


しっかりとした口調でピカチュウはそう述べた
視線は俯いたままでやはり悲しそうだった


まわりくどく例えを使ったわかりにくい説明だったが今日がなんの日であるかを思えば答えは簡単だった


「もらうだけならいいんじゃない?」
あまりにも早く出た返事はあまりにも軽率だったかもしれない
下手すれば答えは書き直され自分に被害が及ぶ


だけどにゃーには確かな確信と自信があった



「そうだね…僕は酷い奴だよ、答えることも断ることもせずに…逃げてるんだから」
ピカチュウは曇った表情をさらに曇らせた
「ならにゃーはもっと酷い奴にゃね」
にゃーは口の端を吊り上げた


鎖が奏でる冷たく乾いた音は乗っていた人が降りたことを意味した
ピカチュウの横にたつ
血色の良い頬がすっかり冷たくなってしまっているのを唇で感じとった


俯いていた顔をようやく上げたピカチュウの表情は曇っておらず驚いたような表情だった
「その答えを変えさせるつもりなんてにゃいんだから」
そう言って笑って見せるとピカチュウはこの日初めての笑顔をみせた


冷たく乾いた音はさっきよりも大きく勢いがあった


冷めた体は重ねても冷たいだろうと思っていたが暖かかった





「じゃあ行こうか」
「そうだね」
暫く抱き合っていた体を離すと手を繋いだ


ピカチュウの顔はもう曇ってなかった
そんなピカチュウを見てにゃーは繋いだ手をさらに強く握り締めた


「どこいくの?」
「さ〜にゃ〜とりあえず朝までデートかにゃ?」
廃れた公園から栄えた街へと向かう1本道を歩く
街は甘い光でいっぱいのようだ


風はやはり強く突き刺さるような風だったが
何故だかもう寒くはなかった


先ほどと変わっていないのは包装紙だけだった


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無駄に長くなってしまいましたすいません…
しかも急いで書いたからいろいろおかしなことになってます
公園の描写とかいるのかなあ…









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