第3章 みつかった


「たく…なんでニャーがこんなことを」
そう愚痴ってみるが寒い風に気持ちもろとも吹き飛ばされてしまった
あまりの寒さに腕で肩をおさえるが当然効果はなかった


元来猫は寒さに弱い
有名な童謡だってそう詠っているのに


「たく…ムサシめぇ…」


唇を噛み締めこうなる事態をおしつけた人物の名をぼやくが虚しさがつのるだけだった


さっさと済ませて帰ろう


そう思い前を向いて歩いていた
中心街は活気に溢れた市場が並び商店街のようになっていた


すごい人ごみだか小さく体の柔らかい自分にはなんてことはなかった
目的の場所にむかって人ごみをすりぬける


ムサシが買い出しにニャーをさしむけたのは訳があった
ニャーもその訳をわかっていた


目的の店につきニャーは無言でメモを店主に差し出す
無愛想で失礼なように思えるがこれが普通なのだ
ポケモンは普通はしゃべらない
ニャーにしてみればりんごを5つだのバナナが一房だのいう
小学校低学年の初めてのおつかいに使われそうな内容のメモを口述するなど容易い


しかし
それは相手を驚かせる
いちいちそのことに対応したり反応するのは面倒だし
何より時間がもったいない


ニャーはただただ普通のニャースを演じればいいのだ
それだけでなにもかも上手くいくのだ


それだけではないムサシが買い出しにニャーをさしむけた真意はここにある
「いや〜えらいねポケモンくん、はいこれはおまけ」
そこそこポケモンの中でもニャーは有名な種類に分類されると思っていたので
名前で呼ばれなかったのは少なからずショックだった


ムサシの真意はそうおまけにある
ポケモンが買い物するなんて
できるなんて珍しいにもほどがある


まず普通のポケモンはできない
だからこそどこの店の店主もニャーがいけばおまけしてくれる
ムサシはそれを知っていた


案の定今回もムサシの思惑通り事は運び
ニャーはおまけと周りからの関心や感動、尊敬の眼差しを手に入れた
渡された袋をみておまけが金銭的な意味でなく量的な意味であったことにげんなりし多少顔を歪ませた


その後も目的の店を回る


やはりどこの店の店主も関心しおまけをしてくれ周りはやはり関心や感動、尊敬の眼差しを注ぐ
いつも感じ注がれる視線との違いに多少喜びがこみ上げた


しかし、計算外の出来事がおこった


計4軒の店で買い物をし
全てでおまけをしてもらった
けれどそれらは全て量的なおまけでありいつもと違い金銭的なおまけをしてくれた店は一軒もなかった


おかけで随分な量になってしまい
持つことも運ぶことにも理不尽な痛みがと怒りがこみ上げた
しかし、反対に外気温と体温が下がっていくのを感じ重さへの理不尽な痛みと怒りが下がっていく


早く帰ろうそう思い息を大きく吐いた


荷物のおかげで体の表面積が増し来たときよりもずっと帰りにくくぶつかる可能性も上がった
それでもなんとか人ごみを避けてやっと人ごみを抜けた


ひらけた道路にでたことに今度は安堵の息を大きく吐いた
重たさと苦しさから顔を下へと垂らす


暫くそうしていたがもうひと踏ん張りと思って顔を上げる



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……………………
……………

上げたことを後悔した
自分は猫なんだから
自分からうまれた猫背という姿勢でうつむいたまま歩めば良かったのだ


何故顔をあげたのか


見上げた先にいたのはまぎれもないピカチュウだった


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すいませんまだ続きます
あと1話か2話で終わる予定…予定

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