*気持ちかくれんぼ*


1章 見つけた気持ち


「今回も失敗かぁ…」
「あーもー!!くやしぃー」
「次こそピカチュウゲットだにゃ!!」


今回も失敗だったいつものことだった
もう日常になった行動と失敗
なれてしまったとはいえ嫌な気分だった


他の任務では失敗などしたことない
ポスターにされるほどエリートで組織から期待されている
あの人からも…


でもこの任務は失敗してばかりだ一度も上手くいったためしがない
他の任務でもエリートぶりはどこにいってしまったかのように上手くいかない


なのに
なのに
何故自分は自分達はあのポケモンをゲットしようとこの任務を続けているの
何故そこまでピカチュウに 執着するのか
考えてみると何故なのか


たしかにあのピカチュウは強い
しかし他にも珍しいポケモンや強いポケモンはたくさんいる
別にサカキ様に命令されたわけでもないなのに
こんな任務しなくてもいいのに
何故考えても答えはでなかった


「にゃあおみゃーらなんで、なんでにゃーたちはピカチュウにこだわるのかにゃ?」
「なんでって言われてもなぁ」
「そういえばなんでかしらね?」


仲間達に聞いても帰ってくるのは頼りない答えだった
「でもニャースお前だぞ言い出しっぺは?」


コジロウはそう言った
「そうだっけ?」
と言うムサシの声がどこか遠いもののような気がした


にゃーが言い出しっぺ?


思いかえしてみる確かに言い出したのは自分だった


あのピカチュウを一目見たとき
一目見たときから心にとまった


今までピカチュウなど何度も見てきた
しかしあのピカチュウは違った


今まであったどのピカチュウよりも毛並みが美しくつぶらな瞳をしていた
頬は玉のように艶やかでハリがあった
見た目はどこか品があり凜としていた
黄色い体は月さえも光を失い霞んでしまうほどに綺麗だった


それだけで欲しいと思った
それが執着する理由だとしたら矛盾が生じる


自分はピカチュウの強さに惹かれたわけではない
しかし欲しいという気持ちはたしかにある
その欲しいと思う気持ちは確かにある


しかしそれがピカチュウの珍しさや強さでないのなら何故あんなにも執着するのか何故欲するのか
いくら考えても
答えは出なかった


                                  ○


霧がかかったままの心をひきずったまま夜になった
ずいぶんと夜が更けたにもかかわらず一向に寝付けなかった
なんの悩みもなさそうに両脇で鼾をたて眠る仲間と心のなかをそっくりそのままいれかえたかった


月が綺麗だった


体を少し疲労させれば眠くなるだろう
そう思って月明かりの下散歩をはじめた
明るく煌く月は足元は照らしてくれる
しかしその光さえも心までは照らしてくれなかった


結構歩いたものの霧ははれず
眠気は一向にこなかった


ふと視界をずらすと煙が目に入った
おおかた人間でも寝ているのだろう
もしかしたらトレーナーかもしれない
うまくいけばめずらしいポケモンが手に入るかもしれない
そんな悪知恵がはたらいて煙のあるほうへと近づいた


おどろいた


そこにいたのは
なんとあの
ピカチュウとジャリボーイ一行
ピカチュウは火のそばで丸くなって寝ていた


好機


そう強く確信した
寝ている今なら簡単に連れ去ることができる
ジャリンコたちは寝ている
電気対策もある
口の端をつりあげて微笑んだ


起こさないように
静かに
静かに近づく
起こさないまま傍にまで来れた


顔を覗き込む


焚き火によって照らされた体は光り輝いていた
小さな口を開き静かに呼吸をしていた
頬はやはり玉のように艶やかでハリがあった
そしてやはり寝ている姿も品があり綺麗だった


かわいい
綺麗
美しい


欲しい



欲しい


欲しい



ああそうか
そうだったのか


わかった
欲した理由が
わかってしまった
欲しい理由が


わかってしまったことに後悔した
何故わかってしまったのか
何故気づいてしまったのか


暫しの静寂のあと


静かに
優しく
起こさないよう
気づかれないよう


口づけた


自分の瞳から流れた雫が
ピカチュウの頬を湿らせた


僕は君のことが好きなんだ



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10万ヒットリクエストものです続きます

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