*かくれんぼ* -胡麻の章-


目を開けるとそこは真っ暗で
狭くて
四角い空間だった


目が覚めたことに後悔した
そして思い知った
これは現実だということに


     ○


昼ごはんを食べた後僕はサンドやコラッタ達と集まった
遊ぶためだった
ピカはこなかった
朝からフシギダネとともに出かけていた


「じゃあ遊びに行ってくるね」
「あんまり遅くなったらダメだよ」
「うん」
そんな会話をして家を出た


集まった僕らは何をしようかと話し合った
「何して遊ぼうか?」
「かくれんぼなんてどう?」
誰だか忘れたが
その発言にみんなが賛成し遊びが始まった


鬼はたしかサンドだった


僕は前々から目星をつけていた隠れ場所に向かった
そこは人間と呼ばれる生き物がたくさんのゴミを不法投棄していた場所だった
ゴミ捨て場などでけっしてないのに


そのせいで
川は汚れ
木は枯れ
森は汚された


数多もの仲間が住みかをおわれ出て行くしかなかった
ピカが「クソ人間が」
と罵倒した後ヒトカゲが
「ゴミは出れば出るだけ人間は豊かになる…けれど多くのゴミは僕らから住処を奪って―」
といったのが印象的だった


でも今回だけは感謝した
ここなら絶対にみつからないと確信した
僕は上機嫌で白く小さな箱のようなもののなかに入り入り口を閉じた
外の様子が聞こえるように
あつらえたように作られた小さな穴が
右耳に重なった


外でサンドが探し始めたのがわかる声を出していた


少し時間がたつたび
一人また一人と見つかっていく
けれど僕のほうには手が及ばず
時間はすぎていった


外からカラスの鳴き声が聞こえ辺りが暗くなってきたことを知らせた
外で話し声が聞こえた


「くそぉ…どこなんだゼニガメやつ」
「もう暗くなってきたよ」
「降参しようってもう真っ暗になるぜ」
「うーんそうだなぁ…そうするか…」


僕は小さくガッツポーズをして笑うのを我慢した


「おーいゼニガメ降参だー負けだ負け出てきてくれ」
僕はこらえていた笑いを開放して笑った
そして笑いながら入り口に手をかけて押す


しかし


「…あれ?」
あかない


引くのだったのかと思い引いてみるしかしやはりあかない
「あれあれあれ?」
いつの間にか出た汗が嫌なふうに額を濡らした
ドアに体当たりをするがびくともしない
必死になってドアを叩いた


「あ、あけて!!あかないよ!!あけて!!助けて」
外からはあんなに簡単に開いたドアがまったく開かない
びくともしない


頭がいっぱいになる
なにも考えられない
どれだけ声をあげても
誰も気がつかないようで


「おーいゼニガメ?」
「おーいもう終わったぞ?」
「聞こえないのか?」


おのおのの声が聞こえ散っていく
きっと探し始めたのだろう
しかしいくら大声をあげても
いくら叩いても誰も気がつかなかった


「いねえなあゼニガメのヤツ」
「何処いっちゃったんだろう?」


すこし時間がたったあと
再び話し声が聞こえた
声を出しつかれたのか
みんなの声はかすれていた


かくいう僕も声だしと
叩きすぎたことにより手が痛かった


「もう帰ったんじゃねえの?」
最も恐れていた
最も言ってほしくなかった言葉を吐くコラッタ


心臓が止まりそうだった
「そうじゃない?出てこないんだし」
その意見に同意するナゾノクサ


鼓動の間隔が狭くつらいものになっていった
「ピカならまだしもゼニガメが?考えにくいなぁ…」
サンドは納得しなかった


何故見つけれないのだと強く思った
声がこんなによく聞こえるのだからきっと近くにいるはずなのに


「なあもお帰ろうぜ」
「でもなあ…ま、いっか」


ついに絶望が体を支配した
奈落の底に突き落とされたような錯覚に教われる
やがて声が遠くなっていった


「待って!待ってよ!待って…」


声はとどかなかった
変わりに声が遠く離れていくのがわかった


やがて何も聞こえなくなった


怖くて
嫌で
辛くて


泣いた


そのまま気を失った
というより寝た
疲れと
恐怖から逃げようとする
気持ちから眠りについた


      ○


そして目がさめて今にいたる 
状況は悪くなる一方だった


外は暗くなり静寂につつまれた
どこかで何者かの遠吠えを最後に


「…寒い…」
暑く蝉がなき黄色の花が太陽に向かう季節は終わっていた
いまは寒く蝉が地に墜ち花が俯く季節になっていた


本格的寒さでないがこの時期特有の体をなでるような優しくも冷たい風に体をふるわせた
小さく身をかためうずくまりながら考えた


「このままどうなるのだろう」と
お腹がすいて餓死してしまうのだろうか?
寒さに耐えきれず凍死してしまうのだろうか?


いずれにせよ最悪の事態という未来しか想像できなかった
この暗く狭い嫌な臭いのする空間にいるかぎり


ふと前にも似た状態に陥ったことがあることを思い出した
怪物に飲み込まれたときだ


あのときも暗くて狭くて鼻をつく臭いが漂う場所にいた
あのときももうダメだと思っていた



でも



あのときは…




バコッ



静寂がいきなり音によって消された
眩しい光が入り口からさしこまれた
目をしかめた


目がすこし慣れてきた痛いくらい眩しいほうをなんとか直視する
「ドンガメみっけ」


そういって笑う声が聞こえた
固まった一瞬何が起こったかわからなかった
しだいに理解しはじめそして目から何かが溢れた


「ピカ!!」


そう叫ぶと同時に飛びついてさらに泣いた
「ったくめんどくさかったんだぞ」
「ごめん…」
あやまりながら僕はピカに顔を埋めた
ピカの暖かな体温が伝わってきた


「ねえ…なんでわかったの?」
「あ?」
僕らは並んで歩いていた


ピカが僕を探しにきたのは夕食時なのに戻ってこないのを心配したヒトカゲに頼まれたかららしい
あくまで頼まれて仕方なく探しにきたとピカは主張した
で出てきたところガルーラおばさんがサンド達と遊んでたというので
ピカはサンドの所にいきかくれんぼの途中でいなくなったことを聞き僕を見つけるにいたったわけらしい


でも何故かくれてることがわかったのか
誰にも見つけられない自信があったのに


「へ、お前の隠れそうなとこなんてすぐわかったよ」


俺をだれだと思ってるとでもいいたげだった
ふにおちなかったが
見つけてくれたのにケチをつけるわけにもいかない


「ほら、早くいくぞ」
そういうと僕の手をしっかりと握った


「これなら迷子にならないな流石に」
そういって笑われ僕は少しムッとした


        ○


「それは災難だったねでも見つかって良かった」
帰ってきて遅い夕食を済ませた僕に
ヒトカゲはそういいながら笑った


もう笑い話に変えてしまうヒトカゲにすごさを感じる


「ゼニガメそれは冷蔵庫っていうものだよきっと二度とはいったらダメだよ」
そうダメおしした
「まったくこれだからドンガメは」
ピカは欠伸をしながら言う


ヒトカゲは向かいに座り
ピカは隣に座っている
カップの中のミルクから湯気が洩れた
僕はピカに問いただすことにした


「ねえピカどうして?どうしてわかったのさ?」
「ああもううるせえなあ…」
「おしえてあげなよピカ」
ヒトカゲはそういいながら笑った
ピカは渋ったような顔をしたがやがて口を開いた


「お前はいつもそうだかくれんぼで隠れるときはきまってどこか狭いくらいとこに隠れようとする」
ピカはそういうと後ろに組んでいた手を放しこちらを向く
「こないだは洞穴のなか、その前は岩の間、それ以前もかくれんぼっつたら隠れるのはどこか暗くて狭い場所だ」


そう言われてはっとした
自分でもいままで気がつかなかった
けれど
そういわれたらたしかにそうだ


ぼくはいつも暗くて狭くて誰かから見えないような場所にばかり隠れる
ピカはさらに続けた
「それにお前あのゴミ捨て場何回も下見してただろ」


それをいわれてさらにドキっとした
たしかに何度も下見をした
しかしとくに意識してしたわけでなくて
ただなんとく何度か眺めただけだった


それなのに
そんなことまで
ピカは知っていた


「へえピカってよくゼニガメのこと見てるし知ってるんだね」
そうヒトカゲが言うとピカは真っ赤になって叫ぶ
「ば、ばかそんなわけないだろ…!!」
「顔赤いよ?」
「けっ…こ、このミルクが熱いんだよ。俺もう寝るからな」


そういうとピカは逃げるように寝室の部屋へと行ってしまった
ヒトカゲがピカの残りのミルクに手を伸ばし口をつける
「ぜんぜん熱くねえんでやんの」
歯を見せて笑いながらヒトカゲが語る


それにあわせて僕もクスリとひとつ小さく笑った


「僕もう寝るね」
「うん、おやすみ」
少しだけ手を振って寝室へといった


もうピカは支度を終えて布団にもぐっていた
もう寝たかな?そう思いながら隣の布団にもぐりこむ


「ピカ…」
「…んだよ眠い…」
少しかったるそうにでもしっかりとピカは答えた
寝返りをうちこちらに顔を向けた


「ぼくね…またあそこに隠れようかなって」
「はぁ!?」
ピカが驚いたように声をあげる


「お前あんな目にあってまだこりないのか?」
呆れたような声初めて聞いたかもとクスっと笑った
「だって誰も見つけられないんだもん」
そういってのける


「そんなこと言ったって…だーもうお前はバカか?今日みたいな目にあってもいいのか!?」
本当だよく見てて知ってて気にかけてくれる


「大丈夫だよ」
「なんで言い切れるんだよ!?」
「だって…ピカが見つけてくれるでしょ?」


笑ってみるとピカは赤くなったいた


「ばかやろんなのわかんねえだろ」
「わかるよ」
素早くきりかえす


「きっときてくれる」
しっかりピカの目を見ていうピカはばっつが悪そうにそっぽをむいた


「ばーかもうねるぞ」
「うん、おやすみピカ」


そう言って僕らは眠りにつく
明日は何して遊ぼうかと考えながら



       ○


化け物に飲み込まれたときどうしたかって?馬鹿だなあ今日と同じに決まってるじゃない


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胡麻さんの助言を参考にして多少加筆をくわえてみました
これが胡麻の章です
こんな感じで進めていけたらなあと

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