*unexpected*



「どうしたのポッチャマ?技にいつものキレがないじゃない」
「…」
「体調でも悪いの?」



コンテストのパフォーマンスの練習中
ヒカリにそう指摘され僕は黙秘するしかなかった


わかっている
バブル光線のでが


遅いこと
量が少ないこと
威力が弱いこと


全部自覚している


わかっているのに直せない
理由だってわかっている


病気だとか寝不足だとかではない


理由は…


チラリと皆のほうに目をやる


ミミロル
パチリス


…そして


エイパム


エイパムのいる場所には


彼が


本来なら彼が腕を組んで
えらそうに
俺様全開で
上からみるような目で



自分を見ているはずの…
はずのブイゼルがいない


ブイゼルはエイパムと交換された
別に離れ離れになったというほどではない
ブイゼルはサトシのポケモンになっただから遠く離れてしまったわけではない


でも


一緒に練習はしないし
向こうでバトルの練習をしていることもあれば
ボールに入ったままのときもたたある



ブイゼルがみていない
ブイゼルが誉めてくれない


それだけそれだけのことで僕はやる気をなくしていた


ブイゼルが仲間になって初めてのコンテストの一次審査
結果は負けてしまった


自分のふがいなさに悔しさがでた
実力不足に涙を飲んだその時だった



「よく頑張ったよお前は」


そういって頭に手をおかれくしゃくしゃと撫でられる
撫でてくれたのは紛れもないブイゼルで


しょげた顔をあげてみた
ブイゼルの顔はニカッとした太陽のような笑顔で
いつものようなえらそうな表情ではなかった温かく包んでくれるような笑みだった


「また次があるさ」

そういってもう一度微笑むと
腕を組み
いつものえらそうな表情へと戻った


胸が高鳴った
上手くはいえないけれど
心のそこからわきあがるような


アツイキモチ


もっとブイゼルに褒めてほしいと思った
もっとブイゼルに笑ってほしいと思った
もっとブイゼルの笑顔を見たいと思った
もっとブイゼルに触ってほしいと思った



それ以来
それが僕のやる気の原動力であった
それらがなくなった今
やる気など到底おこらなかった

つづく

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