ザー…


静かに
かつこんこんと窓の外では雨がふりつづけている



「今夜は止みそうにないか…」


ため息をつき
目を細め漆黒の雲に覆われた空を見上げ
口をあけようとしたときだった


「今夜は満月だったのにね」


自分が言おうとしていたセリフを言われボクは声のしたほうを振り返る


「雨の音が煩くて起きちゃった」
紫水晶のような色のきらめく体毛と艶をもち
尻尾はまるで第3の手のようになっている


彼女


「エイパム…」
「へへ…隣いい?」


無垢な笑顔をみせながら聞いてくる彼女に軽く会釈をすると彼女はストンと隣に座った。


とくに何を話すでもなくただジッと雲に覆われた空を見上げるだけ



嘘空の空間で
使えない時間が流れていく


ビシビシ

雨が先ほどよりもさらに激しくなり
窓を勢いよく叩き付けるかのように降りだす
そこまできて彼女はようやく口をひらいた


「雨強くなってきたね」
「うん」
「…明日…止まないかもね」
「…うん」


特に内容も容質も必要ない
そんな問いかけが続き自然とボクの答えはうんに固定されていた


そんなたわいもない質問を繰り返す彼女に
妙ないらだちを覚えながらも
気を悪くしてはいけないと思い質問的一方通行な会話がつづいた


「今夜は月がみれそうもないね」
「うん」
「満月だったのにね」
「うん」
「ニャースに会えないね」
「うん」
「ニャースのこと好きだよね」
「う…!?」


あまりにも固定されすぎていた会話だったため気がつかなかったが


彼女は2つとんでもないことを聞いてきた


彼女の方を向き直ると
彼女は
神秘的な微笑を浮かべ小さく笑い呟いた


「あーあ、あと少しだったのに」
そうしてまた先ほどのように歯を出して無垢な笑顔を作る


外で光った閃光の瞬きとかさなったその笑顔に
言葉にならない不安と恐怖を覚えながら


つづく
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