それが真実なのなら
夢であって欲しい


*



段々とむし暑くなってくる日々が続くある夜
私は少しの物音を聞いて目を覚ました



何かと思いまだ目覚めぬ瞼を擦り物音のした方を向く
そこには…


愛しの人が
ゆっくりと起き上がりながら
夜空を眺めていた



かと思うと
四足歩行になり
誰も起こすことなく
また誰も起こそうとするわけでもなく



ひっそりと静かに森の奥へと入っていく
何をするきなのか
何があるのか


人の後をつけるなど
いけないことだとわかっているのに



私は気がつくとこっそりとピカチュウの後を追っていた
目的地が決まっているのか
ピカチュウは振り向くことも迷うこともなく


たくたんたんとかつ静かに道を進んでいく
付かず離れず気づかれず


そんな距離を保ちながら
私はピカチュウの後をつけた


やがて大きく開けたところに出た
そこは小さな湖畔が広がっていた


彼は湖畔の側にたたずむ大きな岩の前まで行くと
辺りをキョロキョロと見回した


無意識のうちに見つからないしようという思いが働き
私は森の陰に隠れた


暫く見回すと彼は口をあけた
「―」
何を言ったか遠くて聞き取れなかったが


何かを呼ぶような声だった


すると岩の向こうから何かが現れる



その存在を見て私は息を飲んだ



なんと現れたのはロケット団のニャース




昼間に頬つけた
ナエトルの葉っぱカッターの傷痕がまだ直らず赤くなっている


間違いない


しかし私は混乱した
何故ピカチュウとニャースが会っているのか
感じからして間違いなく待ち合わせをしていたに違いない


しかし


私がこの場に起こっていることを理解する前に
事は動きはじめた


ピチャピチャ



くぐもった水音が聞こえ私はピカチュウ達のほうに向き直る
「!?」


そこにはなんと
ニャースの頬の傷を丹精に舐めるピカチュウの姿があった
ピカチュウはニャースに完全に寄りかかりニャースもまたピカチュウの肩を抱き自分のほうに寄せ押し付けている



ますますパニックに陥る私をよそに二人は会話をしはじめた
「ごめんねニャースあのバカガメ加減ができなくて」
ピカチュウはいやらしくナエトルを罵倒する


「いいのにゃこのくらい平気平気」
「そ、よかった優しいんだねニャース」


そういって微笑むピカチュウの笑顔は
いままでに見たことない
私達の前では見せたことのない


嬉しさと優しさを秘めたきらびやかな明るい笑顔だった
その瞬間ニャースがピカチュウの方を向き直り…


「―!!」


キスをした


軽く唇同士をあわせたキスではなく
深くかつねっとりとした


濃厚なキス


しかしピカチュウは嫌がることなく
寧ろ嬉しそうに微笑みキスをうける


寧ろピカチュウから求めていたかのように


暫くすると唇が離れた
すると
「今度はボクの番」


ピカチュウはそう言うとニャースに先ほど同様濃厚なキスでかえす


もう何が何だかわからない
アレがほんとに私の知ってるピカチュウなのか
自分でつけてきたにも関わらず疑いたくなってしまう程に信じられない


あんなの私の知ってるピカチュウじゃない


どれだけそう叫びたかったことか
しかし
揺るぎようのない事実は私にさらなるダメージを与える


ニャースがピカチュウの両肩をおさえつけ地面に押し倒したのだ
そして

ニャースはさらなる濃厚なキスをピカチュウにおとし
足を巧みに動かしピカチュウを撫でる


私は目を白黒させながらピカチュウに目をやる
そこにいたのは


いつもの可愛いかったり


凛々しかったりするピカチュウ等どこにもなく



ただただ目をトロンとさせ
艶やかな表情と息を荒くして
両手でニャースをがっちりと掴む…


淫らな鼠と猫がいるだけだった



つづく
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